さわるなキケン

荒竹純一「日常業務の中の法違反を防ぐ! 著作権法違反防止マニュアル」
(ビジネス法務 2009.7 中央経済社
を読む。


なんていうか、実際的な記事だなぁと思った。
企業の法令遵守が叫ばれる中ではあるけど、
著作権ってちょっとビミョウなとこなのよね。

・・・企業内においては、新聞記事や書籍の一部をコピーしてファイルし、CD-ROMやWEB上のデジタルデータをコピーして保存し、こうした文書やデータを利用して社内文書やプレゼン用資料を作成し、これを配布したり、インターネット上で送信するなどしている。そして、これらの行為は業務遂行上日常的に行われているものの、よく考えてみると・・・著作権法違反行為と評価されうるものである。ただ、これらの行為を一律に禁止すると、日常業務に著しい障害が生じ、業務が滞るといった事態を引き起こしかねないために、著作権法を形式的に解釈・適用した内容の規定や違反防止マニュアルを制定してその遵守を要求することは現実的でない・・・。
(47ページ、強調は引用者)

そう、「現実的でない」っていうね。
だから、図書館(室)にいる人間が、いくら著作権について指導するべき立場にあるからといって、業務上のコピーを頑なに拒んじゃったりすると、「あんたバカァ?」と言われかねないこの空気? みたいな?


まぁ最終的には法制的になんとかしてほしいわけだけど、
それまでどうするかっていうことがこの記事のアドバイス


・私的利用の範囲
一般的に企業内の複製は私的利用には当たらないとされるけど、個人購入の資料を必要な部分だけファイルして使うとかはオッケー。部署で買ってる場合でも同様の利用なら類推適用でオッケーとする学説あり。
ただしこれらは裁判所の公権的判断ではないよっと。


フェアユースの適用、権利濫用の法理→いまんとこムリムリ。

結局、裁判所などの公権的判断もしくは一般的な学説を前提にすれば、企業内もしくは業務上行われる無許諾の著作物の利用行為は、ほぼ例外なく侵害を構成するといわざるをえない。
(50ページ)

でも、いまやってるコピーだって、なんでもかんでも訴えられるわけじゃないってことは、

・・・少なくとも現段階において、当該権利は当該利用行為に対して現実に働いている権利ではないといわざるをえない。
(同ページ)

さぁ、いわざるをえない攻撃だ。笑


でまぁとりあえず、社内規定としては、

  • 複製を社外に送るとか、アプリケーションを勝手に複数PCにインストールするとかは明文的に禁止しろ。
  • あとはビミョウだから触れるな

と。

  • ただし文句言われた部分は速攻で明文で禁止しろ。

と。


うーん、これは、結構思い切ってるけど(というのは、この記事で書かれていること自体がいままであえて触れられて来なかったことだと思うから。笑)、かなり説得力あるなぁ。
まぁ黙認、てことですよね。
そういう表現はしてないけど。


図書館のマナーにしてもそうだけど、
ある物事の社会的な評価が揺れ動いてる段階では、
黙認の効用ってあるよなぁ、と思う。
良し悪しの議論はあるにせよ。


でも結局、意味のある黙認を否定する人って、ただ自分が悪者になる勇気がないだけで、誰かがルールを決めてくれればそれに従うからはっきりしてよって言ってるだけじゃね? という気はしてしまう。