すみませんがご返却いただけますか(2009/3/20転載)

あまり調べるのは進んでないけど、
図書館での貸出はたぶん民法上、
使用貸借契約にあたって、
本を返してくれないときはたぶん、
民事上はその契約違反が問題になって、
刑事上は、横領罪が適用されるかという、
ことになると思う、
というのが、とりあえずまとめ。

刑法
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
ところでいま、
川島武宜の『日本人の法意識』(岩波新書
という本を読んでいて、
その中、
日本人の、所有権についての意識を述べているところで、
本の貸し借りの例が挙げられていた。

われわれが本を貸した場合に、借りた人が用ずみの後直ちに自発的に返してこないことが少なくない。そのような場合に貸した人が・・・若干悪びれて口実をもうけ言いわけをして・・・でないと、返してもらいたいとは言えない。・・・借主は、・・・何ら罪の意識をもたないのが普通であり、むしろ、返還の要求があるまで返さないでもっているのが当りまえででもあるかのごとくであり、返還の要求をうけても、悪びれることもなく、また言いわけをすることもないのが普通のようである。
・・・これらの事実は、・・・すなわち、私の所有物である本を他人に貸したときは、私の現実支配の事実が終ったことによって、その本に対する私の所有権は弱いものになり、これに対応してその反面で、借主があらたにはじめた現実支配の事実は、私の所有権から独立した一種の正当性をもちはじめ、だんだん所有権に近いものになってくるように思われるのである。
(79-80ページ)
そういう風に日本人は(無意識にでも)考えがちなのではないか、
という話で、
この本が出たのは1967年だけども、
40年たってみて、
まだそういう面があることはじゅうぶん納得できる。
またこの例は個人間の貸し借りだけど、
図書館などでも貸す人借りる人の間の、
関係はそんなには、
変わってないと思う。

少し話はそれるけど、
「図書館利用者のマナーの悪化」
というのは、
ぼくは神話だと思っている。
あるいは、単に、
色んな人が来るようになった、
というだけの話だと思う。
要するに、年取った人が、
「最近の若者は」
というのと同じで、
昔からあるものが、
変わらず今もなくならない。

ニュースを検索してみれば、
図書館は、
「書き込み」とか「切り取り」とか、
そういうのを嘆くものばっかりで、
もういいかげん、
そんな道徳的記事で載せてもらうのは、
やめたほうがいいと思う。
うんざりするよ、
そういう、
「せっかくわたしは良いことをしてるのに」
みたいな、姿勢はさ。