個人技は派手にも地味にも

10日に横浜の図書館総合展に行かせてもらった。


まず13時から、
デジタルアーカイブ時代に公共図書館はどう変わるべきか?
を聞く。公共でまともに働いたことないけど。
主催はネットアドバンス。
席は9割方埋まってたんじゃないかな。人気フォーラム。


実況は無理だったので(携帯しかないし)、メモれた範囲でまとめとく。


まず植村さんから概要説明。
GBSとか、Kindleとか、デジタル資料が一般化してきて、10代とか見るともう読書概念も変わってきているよ、という前提で、公共図書館どうするん? っていうお話。


次に笹沼さんの発表。

「ゆうき図書館のWebサービス 〜外部情報源の活用と市民参加型サービス〜」
1.ゆうきははてなブクログなどの外部サービスを利用しているが、サービスだけでなく外部機関が発信するデジタルデータも活用しようということになった。
2.例としては、新着雑誌記事速報(NDLのデータを利用、RSS)、結城市関連論文ナビゲーター(準備中、ciniiのデータを利用、API)、国会図書館だとデータベースリンカーからGBSなどに飛べる。
3.市民参加型サービスの例としては、雑誌記事紹介ブログとイベント棚がある。ブログは体験学習の中高生に記事を投稿してもらう。市民からの投稿を受けつけるばあい、掲載基準を決めないといけない。イベント棚はブログパーツで並べると参加している感じが出そう。そこからコミュニティに発展するかもしれない。
4.Webサービス推進に関して、ゆうき図書館はこういう考え方をしている。・蔵書以外の利用によるサービス拡張をしたい、・市民参加型にしたい、・非来館者へのサービスを充実させたい(来館者数以外での評価の指標となる)、・Webから図書館の書架に戻ってくるようにしたい、・仕様は公開して公共図書館全体を底上げしたい。
5.現状の限界は、外部データ利用は図書館じゃなくてもできるということと、図書館のサイトに来ないと利用できないということ。今後は図書館の蔵書やサイトにつながる外からの導線がほしい。


これをふまえて、笹沼さん、沢辺さん、柳さんをパネリストに、植村さんが司会でディスカッション。

植:ゆうきの例は業界ではかなり先端的だけど、ゆうきしか知らない人はすごいと思ってるの? それとも「図書館はこういうもの」? 10から1で言うと?
笹:3くらい。
沢:そんなもんでしょ。それに「公共図書館はそんなことよりもすることが」みたいな空気もあるし。ゆうきの事例は珍しい。
  OPACで蔵書検索して0件だとそんな本はないと思われるけど、確かに世の中にその本が存在するということを図書館は知らせるべきだと思う。その意味でも図書館のサイトは閉じられている。
  ゆうきは元々は独自のシステムを作ろうとしていたけど、予算の関係で無料のサービスを使うことになった。予算がダメでもじゃあ、というこの姿勢も珍しいものだと思う。
  ただ、「図書館ってほんとに必要なの?」みたいな声に対抗するには、Webサービスの利用だけじゃ弱いかも。逆に、もっと蔵書を充実させる方がむしろいいんじゃないかと最近思う。
柳:(発表を聞いて)これが「先端」というのはちょっと、衝撃的。
  千代田でも「外部資源」「非来館者」を意識していた。その点は同じ。そこからWeb図書館が生まれた。日本では他にないと思う。E-bookの貸出なんて欧米では当たり前なのに。
  外部については利用するだけじゃなくて「利用される」、コーポレーションという視点が欠けていたんじゃないか。
  なぜこういうものが取り込まれないかというと、図書館には経営が「ない」から。時代が変わっているのに古い商品を売り続けているお店みたいなもの。
  ゆうきは笹沼さんが個人としてやってきたのか、それとももっと政策的なものがあったのか、聞きたい。
  でも、元々のサービスと対立的に考えること自体がおかしい。「本が基本」という根拠はないですよ。従来から図書館は先端的なものを取り入れてきたはずなのに(カード目録・コンピュータ導入)、最近はその精神が失われている。
笹:はたらいてみて、自分には「図書館政策」というものはないと思った。建物を造るときには色々あるけど、そこまで。できたらあとは運営だけ。
  対人サービスをもっと、と求められることもあるが、リソースは限られている。ゆうきとしては、調べもののできる図書館にしたい。市民に競争力をつけるという意味でも。
植:なぜ「第二のゆうき」は出てこないんだろう?
沢:図書館の人ってみんな勉強好きなのにね。全然出てこない。
  柳さんの例はトップダウン、笹沼さんは下からって感じで両方ある。今日は現場の人が多いだろうから「なんで君らやんないの?」と言いたい。個人の力でここまでできるんだからさ。
  横芝光町立図書館はツイッターのアカウントとかもあるけど、ああいうのも個別に決裁とか取ってないらしい。最初ホームページ作るとき「情報提供うんぬん」って言っておいて、あとは「以下同じ!」でつっぱしってるだけ。
  だから、個人でいいからおもしろいことやったらいいじゃん。それができる環境にあるんだから。新聞のチラシの収集とかでもなんでもいいんだよ。
植:まぁ図書館は保存とか考えなきゃいけないからある程度保守的になっちゃうんじゃない? 100年のスパンとか。
沢:100年のスパンなんてぜったい考えてないよ! だって国会図書館なんか本のカバー捨ててるんだよ?
  ともかく、もう役所は「ぬるさ」が良いところだと思うんだよね。多少変人だって排除されないんだから。


植:この辺で会場から質問あれば。
A:スタッフに異動があって図書館でずっと働けるわけではないという問題については?
柳:2,3年あれば充分できますよ。やるかやらないか。10年なきゃできないっていう人は20年経ってもきっとできない。
  ただ指定管理者制度で良いことはたくさんあった。そのひとつは、ガバナンスとマネジメントが分離してそれぞれに責任が生まれるということ。
沢:いや、それはいまはまだ理論の段階でしょう。分離できるかもしれないけど、できないかもしれない。まだわからないよ。


植:飛躍するけど、図書館は公民館と区別がつかなくなるんじゃない?
笹:現状では蔵書を利用すれば特徴は出せると思う。でも将来は公民館美術館文書館含めて生涯学習提供施設として一本化するかも。
柳:世界的にもMLA連携は進んでいる、国家政策として。デジタル化がひとつのきっかけになっていると思う。でも「やかた」を区別する意味もあるよ。
植:もう近々、“「やかた」の意味”に特化した形の変化が進むんじゃない?
沢:それは植村さん頭良いからそうスイスイ行くと思うかもしれないけど、そうかんたんには進まないよ。いま資料を保存するってレベルでももうぐちゃぐちゃなんだから。
笹:ゆうきも去年くらいに条例ができてやっと他部署の文書とかがちゃんともらえるようになった。
柳:国と地方では行政のやり方がかなり違う。国でも仕事が競合しそうなら省庁間調整で話し合われるけど、地方は押し付け合いって感じ。「いや、うちはそれはいいです」みたいな。結局甘いんだよね。でもだから、やりたいことがある人はつけ込む余地がある。


植:会場から何かあれば。
B:大学では機関リポジトリとかあるけど公共図書館での電子化の例はある? 情報発信をするのは大事なことだと思う。共同リポジトリなどはあるけど。
植:公共図書館にそういうのはないという前提で始めてしまっていたけど。大学図書館でも、リポジトリは生き残りのために始めただけで先端性の提示ではないと思う。自分の仕事のフリしてるけどほんとは図書館がやらなくてもいいこと。ただ、公共図書館もそういう生き残りのためのワードを手にするべきかもしれない。
柳:公共図書館はまだおしりに火がついてないから、そういう追い込み方は難しいと思う。
  繰り返しだがITと現状の図書館は対立ではない。最近の図書館員は本当に自館の本のことを知らないから、棚を知ることも重要で、書店がやっているような「担当制」でその棚だけは専門家になるとか。ただそこを充実させるためにはICTは必要になる。


C:高齢者などパソコンが使えない人も図書館にはたくさん来る。誰のための図書館なのかということを考えさせられた。市民の立場が大事なのでは。
植:市民の立場って本当に届いてるのかな。じゃあ皆さんから回答と、最後に一言ずつどうぞ。
沢:やっぱりネットだけじゃなくてあえて逆も見ないとと思う。地域の図書館にしか収集できない資料ってもっとたくさんあるはずですよ。
  最後に一言、民間の出版社が資料を作っているという事実をもっと意識していただければ。
柳:市民の声というと、例えば開館時間だと、長くしてほしいという声が届きますね。そこで実際長くすると、利用する人の層も変わってくるわけです。だから、現状でその場にいない人のことも意識してほしいなと思う。
  今後は蔵書を作ることから始めないといけない。そしてそのためにはICTが必要になります。
笹:ゆうき図書館のユニークユーザってどのくらいなのかが気になっている。リピーターだけでなくもっと外から来てもらえるように導線を作りたい。その意味ではいまやっているデジタル化の作業は楽しいですよ。
植:いまITに関わっていることで、10年後にも主要な立場で活躍できるのではないでしょうか。



あの、みなさんもう少し丁寧に話していたはずです。念のため。
ぼくが書きながら調子に乗ったところもあるかも。


はじめは資料がひとつ配られてないとか不安な立ち上がりだったけど、終わってみればおもしろかった、よ?
会場に苦言。ケータイ鳴らしすぎ。ふざけろ。高校生か。(いや高校生はケータイにもっとなじん(ry
あと質問してくれた人はえらかったと思うにせよ、「宣伝になっちゃうんですけど」連発にはイラッとね。まぁ、そこは、まぁ。
内容については、もっと自館資料としてのデジタル資料という話かと思ってたけど、意外とそうでもなかった。めんどくさいのかな、そういう方向だと。とりあえず、館内PCでネットは閲覧のみで印刷できませんとか、やっぱどうかしてるよなとふと思ったり。
まぁー。
仕事に直接活かせるって感じではないにせよ。
自分(個人)でやりたいことをやったらいいとか、そういうのは刺激にはなったかな。
おもしろかったです。


で、肝心の法律のやつは・・・すいません明日でかんべんしてください。