電子版その後

新聞研究の7月号で、「デジタルメディアの新展開」という特集連載の第1回が掲載されている。

紙とネットの共存目指す――日経電子版(Web刊)の創刊
野村 裕知(日経)
「ニュースは無料」への挑戦――EZニュースEX、エースタンドの取り組み
佐藤 吉雄(朝日東京)
全国のファンに届けたい――「デイリースポーツ電子版」開発の背景
大町 聡(神戸)

以前の記事で、日経とデイリーについては取り上げたけど、
こう見るとやっぱり、おもしろい組み合わせだなぁと思う。


日経の記事ではまず、

…有料の部分ばかりが強調されるのも実は本意ではない。
(8ページ)

と書かれ、「フリーミアム」モデルとして無料のコンテンツも膨大にある、と述べている。


でも、
日経電子版、有料会員7万人超え 「日本で電子版が離陸期に」
ITmedia
を見てもやっぱり有料会員の数がすげえなあ、と思ってしまう。


それにやっぱり日経の場合は、日経電子版のフリー部分を読んだ人の一部が有料会員になる、というよりは、もともと紙の新聞にお金を出していた人があとちょっと足して電子版の会員になってる方が多いんでないの、という気はする。
それは「フリーミアム」とはなんかちょっと違うような…


それから読んでておもしろかったのは、

紙面イメージで記事を閲覧できる「朝夕刊」には多くの改善要望が寄せられており、新聞記事のスクラップ、クリッピングなどへの利用ニーズの強さを再認識した。電子版に対して読者が期待しているのは「速さ」だけではない。新聞社がニュースをどう判断し、どのような形で扱うか、情報の「価値付け」に対して大きな信頼を寄せている。読者調査からもそんな傾向が浮かび上がった。
(11ページ、強調は引用者)

これは本当にその通りで、図書室にいても、特に大学の事務方から記事を探してほしいと言われるときには、記事の大きさを必ず気にしていて、データベースがあっても紙面(原寸大)で見て取り上げられ方を知りたい、と言われる。
朝日の「聞蔵2」や読売の「ヨミダス歴史館」といったデータベースでは、たとえ記事がイメージで表示できても、大きさが紙面通りになっておらず、せっかく新聞社が行なった価値判断を捨象する形になっていて、もったいないし、ちょっと使いづらい。
日経がそのあたりをしっかり意識しているのはさすがだなーと思った。


デイリースポーツの記事では、冒頭で、

かつてデイリースポーツに親しみながら、転勤や移転で読めなくなった読者や、遠方のコンビニや駅まで買いに行くのが難しい読者など、全国の虎ファンに訴求するための新しい手段が必要となっていた。
(16ページ、強調は引用者)

と書かれ、爆笑してしまった。
いや、がんばってほしいぞ。


それから値段の面では、

販売価格は、月額1890円(税込み)と決定。「デジタル商品の価格としては高すぎる」という声もあったが、現行の宅配価格と比べて印刷、配送などのコストを除いても、現在の取材、編集など全体のコストを考えると、あまり安くはできない。その一方で紙の新聞に比べると、電子版は一覧性や、PCを起動しなければ読めないなど便利さで劣る。その分、割安感がなければと考えたうえでの1890円という価格になった。
(18ページ)

とのこと。やっぱり電子版、モノがないぶん安いほうがうれしいよねえ。
ただ安くして質が悪くなっても仕方ないので、うまくバランスをとってほしい。