事件ってどの部分

『二弁フロンティア』を取り上げた記事で、

で、2009年1・2月合併号のライブラリーニュースNo.135を読んでたら、

2008年の全国図書館大会のことが書いてあって、「図書館の自由」のことで取り上げられたのが、

練馬区立光が丘図書館は貸出履歴をそのまま保存し、所蔵図書・CDに破損・汚染が発見されたときは履歴をチェックし、利用者に問い合わせ、内何件かについては弁償させていたという事件

っていうふうにされていて、これで「事件」とまで言われちゃうのかーってちょっとショックだったので、この件についても詳しく調べてみることにする。

って書いた。


で、「Web2.0時代」における図書館の自由 -平成20年度第94回全国図書館大会兵庫大会・第7分科会「図書館の自由」記録-っていう資料を見つけたので読んでみたけど、山家篤夫さんの基調報告、「図書館の自由・この1年」の中で簡単に紹介されてたほかは、練馬の件はさほど話題になってなくて、よくわからんかった。


基調報告でわかった参考記事。

  • 1月12日朝日新聞が報道した。(←聞蔵2には、1月11日の記事で出てた。地方によって違うのかもしれんけど)
  • 概要は要項に記載(←『図書館の自由』第61号(2008年9月)に収録、とのこと。未確認)
  • 「区民、利用者はどう考えているのか・・・まとめたものを資料に入れた」(←どの資料か不明。たぶん要項?)
  • 7月に東京新聞が取材(←記事不明)
  • 自由委員会は、図書館雑誌のこらむでヒヤリング内容を含め概要を報告


とか書きながらググっていたら、「よりよい練馬区の図書館をつくる会」関連資料・リンク集ってページに、「図書資料の汚破損対策としての履歴保存問題資料リスト」っていうのがちゃんとまとまってた。
これ読めばいいのね。


それでまぁ、まだ全然よくわかってないけど資料読みながら気付いたのは、この件って実は論点が2つあるなーってことで、つまり、

  • 利用履歴を保存してること
  • 利用者に弁償させてること

っていう。
だから、履歴を保存すること自体が悪いのか、利用者に弁償させるのが悪いのか、それとも、保存した履歴を使ったことが悪いのか、保存した履歴を利用者の弁償に使ったというその使い方が悪いのか。
そのへんが、どうも明確じゃない感じだよなー。
でまぁ、履歴の保存を問題にされるのは、現代図書館史的観点からすればある程度しょうがないし、まぁ予想もできるんだけど、最初にぼくが二弁フロンティアの記事を読んでちょっとびっくりしたのは、やっぱり「利用者に問い合わせ、内何件かについては弁償させていたという事件」という言葉のつながりだったのかなと。
「弁償させることが事件なのか?」と思ってしまったというか。
弁償させるべきか否かというのは結構違った話なんだけど、
どうもごちゃごちゃしてしまう。
まぁ資料の管理に関わる問題だから、しょうがないかもしれんけど。


管理について、基調報告の山家さんは全体討議で、

・・・60〜70年代にかけて、管理から利用へという「図書館の発見」を実践していった。今回の練馬の事例は(利用から管理へ)逆行していくという事例である。図書館サービスに対して後ろ向き、利用者管理・利用者敵視という方向になってしまう。
(45ページ)

と述べている。気持ちはわからないでもないけど、うーんと思う。


だって、図書館にある資料というのは、その自治体なり学校法人なりが購入して持ってる「資産」なわけでしょう。それを預かってる以上は、適切に管理に当たるのは当然なわけで、でなきゃお金出した人たち(納税者・学費納付者?)だって怒るわな。財源だって無尽蔵なわけじゃなしに。
んで、そのことが即「敵視」といわれたら、じゃ、どうすんねんっていう。


練馬の件は、ぼくには「逆行」には全然見えなくて、どんどん利用をフリーフリーフリーにしていった結果、利用者数も資料数も爆発的に増大した結果、高度成長期バブル期を経て長期の不景気に陥り財産管理の目が厳しくなった結果、などなど複合的な要因に対応すべく試行錯誤した全く新しいタイプの事例の一つだと思うし、その成否はともかくとして、せっかく生まれた試行錯誤の芽を、伝家の宝刀でここぞとばかりにぶっつぶすみたいなのは、ちょっとどうなのかなって思う。


そろそろちょっと管理を適切にしなきゃ、他の人へのavailabilityという面で利用に影響が起こってきてるぞという状況の中では、もう「管理から利用へ」という単線的な図書館発展論のパラダイムじゃ理解しきれないところまで(たぶん結構前からとっくに)来てるわけだし。
そういう中でじゃあ「図書館の自由」をふまえてどんなことができるんかなって考えるのが生産的な気がする。


とりあえず、「貸出履歴の保存が汚破損した人を特定する上で実効性があるかは疑問である」という主張を「とにかく履歴は保存すべきでない」という立場の人がするのは、論理的に無意味なのでやめた方がいいと思う。その立場の人には実効性があろうがなかろうが関係ないはずだし(それとも実効性があれば揺れるのカナ?)。
それが東京新聞の取材で汚破損抑制に一定の効果があると反駁されたら今度、

効果が強調され、「修正」措置はうやむやにされてよいか。
(2ページ)

とか言われても、笑っちゃうだけだからさ。